「Binary EP321 MEMS」は、発売当時、世界初となるダイレクトドライブ方式のMEMSドライバーを搭載したイヤホンです。
MEMSドライバーを搭載したイヤホンを聴くのは、今回が初めて。
実際に聴いてみると、高音の細かな動きと鋭い立ち上がりに、これまでとは少し違った新鮮さを感じました。
製品の紹介
パッケージデザイン
パッケージは、シルバーを基調とした光沢の強いデザインです。
表面にはイヤホン本体にも通じる幾何学模様が広がり、中央には「MEMS」の文字が大きく配置されています。
光を反射する鏡面調の仕上げも相まって、一般的なイヤホンの箱とは少し違った雰囲気。
背面には製品仕様やドライバー構成がまとめられており、MEMS搭載モデルであることをパッケージ全体で分かりやすく打ち出しています。
付属品
付属品は、ケーブル、シリコンイヤーピース、キャリングケース、イヤーピース用の小型ケースです。
サラサラとしたシリコンタイプのイヤーピースは、S・M・Lの3サイズが各2ペアずつ、合計6ペア付属しています。
付属ケーブルは、銀メッキOFC(無酸素銅)を採用した2芯タイプ。
イヤホン側は2Pin仕様で、プラグ交換式ではなく、購入時に3.5mm/4.4mmから選択する形となっています。
透明感のあるシルバー系の外観は、クリアシェルが印象的なイヤホン本体ともピッタリです。
キャリングケースは、本体とケーブルを余裕を持って収納できるやや大きめのサイズです。
表面は布地で覆われ、上部には「Binary Acoustics」のロゴが入っています。
交換用イヤーピースなども一緒に持ち運べるほか、付属の小型ケースを使えばイヤーピースを散らばらずに保管できます。
イヤホン本体
フェイスプレートには細かな幾何学模様が刻まれており、光の角度によってグリーンやブルー、パープルなど様々な色へ表情を変化させる不思議な外観です。
左右にはそれぞれ「MEMS」と「BINARY ACOUSTICS」の文字が入り、光沢の強い華やかな仕上がりです。
シェルは内部が見えるクリア仕様で、ドライバーや配線まで確認できるほど透明度が高くなっています。
フェイスプレートの装飾性とはまた違った、内部構造を眺められるメカニカルチックな面白さも感じられました。
ドライバー構成は、計5基のドライバーに1基のパッシブ振動板を組み合わせたものです。
内訳は、10mm径ダイナミックドライバー1基、3基のバランスドアーマチュア、MEMSドライバー1基に、6mm径パッシブ振動板1基を加えた構成です。
低音域には、10mm径ダイナミックドライバーと6mm径の羊毛紙製パッシブ振動板を組み合わせた複合ユニットを採用しており、ダイナミックドライバーを能動側、パッシブ振動板を受動側として組み合わせています。
3基のBAドライバーは、中音域を担当する1基のフルレンジBAと、2基を組み合わせた高域用BAユニットで構成されています。
さらに超高域を担当するMEMSドライバーを加え、物理的な3Wayクロスオーバーによって各帯域を分担しています。
MEMSドライバーには、専用アンプを必要とせず、一般的な再生機器で駆動できるダイレクトドライブ方式を採用。
発売当時、この方式を採用した世界初のイヤホンとして登場しました。
薄く軽量な半導体振動板を採用し、高い応答速度で繊細に音を奏でるといった点が、本製品における大きな特徴となっています。
販売先のストア情報
「Binary EP321 MEMS」は、以下のストアでご購入いただけます。
革新的な直駆動型MEMSユニット搭載機
レビュー
レビュー環境
本記事のレビューは、以下の環境で行いました。
| イヤーピース | NICEHCK C04 |
| ケーブル | 付属ケーブル(4.4mm) |
| DAC・アンプ | D&A Alpha Pro |
全体的な音色・各音域のバランス
EP321 MEMSは、明るくシャープな高音域を主役に、十分な量感の低音が全体を下から支えるバランスです。
一言で表すなら「繊細」ですが、柔らかく穏やかな方向ではなく、細かな音の先端がはっきりと現れ、鋭く切り込んでくるような感覚があります。
ボーカルは少し距離を取り、声の存在感よりも、細かな電子音や高い打音の動きが前へ出やすい印象です。
そのため、ボーカルを近く濃密に聴かせるというより、楽曲全体に散りばめられた細部を拾っていく聴き方に向いています。
特に相性が良いと感じたのは、テンポが速く音数の多い楽曲です。
次々と音が重なる場面でも、高音の細かな動きや立ち上がりの鋭さが見えやすく、EP321 MEMSの持ち味を楽しめました。
低音域
低音は量感に不足がなく、高音を主役としながらも音全体が軽くなりすぎないよう、土台をしっかりと支えています。
低い打音やベースも薄くならず、楽曲に必要な厚みと重さを加えてくれる低音です。
輪郭は角を立てるというより、少し丸みを帯びた柔らかな感触。
低音が連続する場面では余韻が重なりやすく、ややボワつくように感じることもありました。
ひとつひとつの音が消えるまでに少し間があり、素早く切れるというよりは、余韻を残しながら鳴るタイプです。
高音域の鋭い立ち上がりと比べると、低音側の動きは少しゆったりとしています。
音が出た後の戻りがもう少し速ければ、テンポの良い楽曲でもリズムがさらに引き締まりそうに思いました。
量感や厚みを重視する場合には受け入れやすい一方で、硬質でキレの良い低音や細かく刻むようなレスポンスを求める場合は、ちょっと好みが分かれる部分だと思います。
中音域
中音域は、高音や低音と比べると少し控えめです。
ボーカルが伴奏に大きく埋もれるわけではなく、歌詞や声の輪郭は追えるものの、立体感や表情の濃さはやや平坦に感じられました。
歌声だけが手前へ浮かび上がるというより、伴奏と近い位置に並ぶような距離感です。
声の輪郭は見えやすい一方で、前後の奥行きや声色の濃淡は控えめ。
音数が増えた場面でもボーカルが消えてしまうことはありませんが、楽曲の中心へ強く引き寄せるような近さはありません。
個人的には、もう少しボーカルとの距離が近く、声の抑揚や厚みを濃く感じられるバランスの方が好みでした。
歌詞の追いやすさはありますが、近く濃密な歌声や、ボーカルの感情表現を最優先したい場合には、少し物足りなさが残るかもしれません。
高音域
高音域は、EP321 MEMSで最も印象に残った部分です。
細かな音がほかの音に埋もれにくく、先端までくっきりと現れます。
鋭い打音や細かく刻まれる電子音も素早く立ち上がり、曲の中へ切り込んでくるような鳴り方です。
個人的によく聴いている楽曲を例にすると、YOASOBIの「アイドル」では、目まぐるしく展開する伴奏や細かな効果音を追いやすく感じました。星街すいせいの「ビビデバ」でも、軽快なリズムときらびやかな音の動きがよく映えます。
音数の多い楽曲ほど、この高音の繊細さと鋭さが分かりやすく表れていました。
MEMSドライバーを搭載したイヤホンは今回が初めてですが、細かな音が次々と立ち上がってくる感覚には新鮮さがあります。
ドライバー構成だけで音の特徴を切り分けることはできないものの、一度はMEMS搭載機を聴いてみたかった自分にとって、期待していた面白さをしっかりと感じられました。
なお、高音のシャープさが魅力である一方、刺激の少ない穏やかな音を求める人には、やや強く感じられる可能性があります。
音量を上げすぎず、細かな音の動きを拾うように聴く方が、このイヤホンの良さを楽しみやすそうです。
まとめ
「Binary EP321 MEMS」は、細かな音を先端まで描く繊細さと、鋭い立ち上がりを楽しめるイヤホンです。
特にテンポが速く、電子音や細かな効果音が多用される楽曲では、高音域の個性が分かりやすく表れます。
ただし、すべての音域を万能にこなすタイプではありません。
低音には十分な量感があるものの、輪郭は少し柔らかく、もう少し素早く収まってほしい場面がありました。
ボーカルもやや平坦に感じられたため、近く濃密な歌声や、引き締まった低音を最優先する場合には好みが分かれそうです。
その一方で、高音の細かさや切れ味、音数の多い楽曲を鮮やかに聴かせる表現を楽しみたい人に分かりやすい魅力もあります。
「MEMSってどのような音を奏でるんだろう?」という興味から、初めてのMEMS搭載機として検討してみるのも面白いと思います。
今回のレビューは以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。








